こんにちは。
顧問の松林です。
昔若かった時に(今も気持ちは若いですが(^-^;)
ドイツに駐在していた時の話です。
僕は余り苦手な人はいないのですが(一番怖い人は家にいます(*_*)が)
その頃非常に苦手な人がいました。
東大の工学部を出てから何を思ったか京大の哲学科に入り
社会に出てエンジニアになった人です。
その人が日本から出張して来て僕がアテンドしたのですが、
フランクフルトでの会議が上手く行って最終日が空いてしまいました。
そこで彼はハイデルベルクへ行って哲学者の道を歩いてみたいと言ったのです。
フランクフルト、ハイデルベルク間は100キロ程ですが
最高速300キロ近い車に乗っていたので行くのは簡単です。
ハイデルベルクは古い大学町で中心にネッカー川が流れていて
そのどちらかの岸が哲学者の道なのです。
ただ、僕は何方の岸が哲学者の道か知らなかったのですが、
「哲学者の道に連れて行け」と言われた時に
「知らない」と言うのも業腹なので 「こちらでございます」と適当に案内しました。
彼は「ニーチェもカントもこの道を歩いて思索に耽ったのか」と非常に感心して歩いていました。
ところが後で調べた所
哲学者の道は僕が案内したのとは反対の岸の道だったのです(*_*)
僕が帰任する時に又彼がドイツに出張して来てハイデルベルクに行きたいと言って
僕がでたらめを言ったのがばれると嫌なので後任の人に
「もし日本の本社から偉い人が来て その人がハイデルベルクに
行きたいと言って哲学者の道を案内しろと言うような事があれば 反対側の岸を案内するように」
と申し送りをしておきました。
しばらくして僕もそれなりに偉くなり
フランクフルトでの会議のために出張しました。
その時も会議が早く終わったので昔の事が懐かしくなり
ハイデルベルクに行って哲学差者の道を案内してくれと頼みました。
ところがその時の駐在員は 反対側の道を哲学者の道ですと案内するのです。
僕が「哲学者の道は対岸の筈だ」
と言ってもガンとして「こちらです」と言い張るのです。
僕もかなり頭に来て
「僕はよく知っているんだ。何故そう頑固に嘘を言うのか?」と問い詰めました。
その返事は
「本社から誰か偉い人が来て哲学者の道を案内しろと言われたら反対側を案内するようにと言う
先任者からの申し送りがあります」
と言うのです。
それで納得しました。
彼には「その申し送りをしたのは僕だからもう気にしなくて良い」と言いました。
僕とその駐在員との間には何人もの人が入れ替わっていた筈です。
その間ずっとその申し送りが生きていたと思うと感慨深いものがありました。
時空を超えた伝言ゲームです。
これ程言葉にはパワーがあるので使い方には十分気を付ける必要がありますね。
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