僕自身の経歴について

僕自身の経歴についてトピックを書いてみたいと思います。
僕はいすゞ自動車の商品企画、開発の担当常務として業務にあたっていましたが、その後
いすゞの子会社の社長に転身しました。

これが本当につまらない仕事で業務の内容は全てルーチンワークになっており僕が何か言うと古株の
役員が「社長、それは前例にはございません。」と止めてしまいます。

社長は決められた書類に決裁印を押すことしか仕事がありません。僕はよく会社を抜け出しては近くの
多摩川の土手で寝転んで時間を過ごしていました。

所がその時耳寄りな情報が入ってきたのです。GMが上海GMの社長を応募していると言うのです。

上海GMの社長へ

僕はGMチャイナのアメリカ人トップとは知り合いだったので直ぐに彼に電話して「僕が立候補する」と
伝えました。
その後電話で何度かやりとりをしたのですが、ある時から急に電話が全く
つながらなくなりました。

メールにも一切の返事が来なくなりました。
僕はもう社長に立候補するつもりだったのでGMチャイナの色々な部署に電話をかけまくりました。

ある時一瞬その彼が電話口に出たので僕は詰問しました。

「どうしていくら電話しても電話に出ないんだ？」彼は答えました。

「デトロイト（GM本社）に怒られた。GMは中国市場を非常に大切だと思っている。
そこの社長にGMの社員でも無いアメリカ人でもない人間を当てる計画があるようだがとんでもない。

直ぐに取りやめるように。」と言われたと言うのです。「だからもう上海GMの社長の話は
無かった事にしてくれ。」と言うのです。

中国の外国資本事情

そう言われて僕は一瞬思考停止状態になりましたが、ある事に思い至りました。
外国資本が中国で会社を立ち上げる時には中国資本が過半数を占める事と言う中国政府の方針があって
事実上海GMも51％が中国資本、49％がアメリカ（GM）資本だったのです。

それで僕は中国側のトップがOKすればデトロイトが何を言っても僕は社長になれるのではないか？と
思いつきました。
それで僕は彼に中国側資本のトップ（上海汽車集団の会長）とのミーティングをセットして欲しいと
頼んだのです。

中国渡航にはビザが必要

所が新たな問題が判明しました。今はパスポートさえあれば中国への渡航は自由ですが　その頃はビザが必要だったのです。
中国大使館に行くとビザの発行は直ぐには出来ないとの事です。困ってしまいましたが色々
調べてみると裏技がある事が分かりました。

Port Entry Visaと言うのがあると言うのです。
これは先ず上海空港まで行ってそこでビザの申請をするというものです。

ビザの申請が許可されればそのまま入国できるし申請が通らなければ日本に送り返されると言う
リスキーなものでしたが僕は即座にそれで行く事にしました。

上海空港についてビザを申請し無事に認められその日のうちに中国のトップの面接を受けめでたく
上海GMの社長にきまりました。

上海GM内情

上海GMの社長は刺激的で面白かったのですが結構大変でした。

僕が社長でその下に10人程度の役員がいたのですが一人を除いて全員がGMの社員で欧米系の
人間でした。

残りの一人は中国共産党の党員でした。

GMから派遣された役員は3年ほどすると又元いたGMの部署に戻る事になっています。
だから彼らのキャリアパスを握っているのは上海GM社長の僕では無くて自分のGM内での上司なのです。

例えばエンジンのエンジニア―は3年経つとGMの元いたエンジンの開発部門に戻る事が決まっているので
僕の言う事よりもデトロイトにいるエンジン部門の上司の言う事を聞こうとします。

共産党党員の中国人の役員は当然共産党の言う事しか聞きません。

4人の優秀な秘書

僕は現状打開の為に先ず僕の秘書と仲良くなりました。
4人の女性秘書がいましたが4人とも非常に優秀で英語も完璧だし能力もハンパ無かったです。

僕が会議等で説明する資料をこんなイメージで作ってくれと言うと期待以上の資料が出来てきます。

会議の招集、アジェンダを決め会議の進行を行い議事録もその場で作り会議の終わりにそれを確認し
各部署への次の会議までに検討すべきAction Planの内容までまとめてしまいます。

GMから来た役員

かなり年上のGMから来た役員を顎で使い資料の修正その他の指示を出していました。
しかもそのダメ出しの仕方がかなりきついのです。

但し彼女達は日本の会社で秘書業務は出来ないでしょうね。例えば会議を始める時に皆に飲み物を
配ってくれと頼むとペットボトルの水を自分のいる場所からゴロゴロと転がしてみんな夫々
受け取って！と言う感じです。

又役員に対する態度もすこぶる横柄で役員が来て欲しいと頼んでも逆に自分の所に呼びつけると言う
感じでした。

但し彼女たちには自分の能力と責任におおいな自負を持っておりGMから来た役員の能力を見切っていた
所がありました。
そんな彼女たちでしたが僕に対してだけは能力を認めてくれ僕の言う事は積極的に対応してくれたのは
幸いでした。

上海GMの社長辞任

僕もそろそろ日本に帰って好きなゴルフでもしようと上海GMの社長を辞めて日本に帰ってきました。

所がゴルフも「次の休みには時間を見つけてゴルフに行こう」と言うと結構やる気になるのですが
「いつゴルフに行っても良いんだよな～。」と思うとゴルフに行く気にもなりません。

僕はやはり貧乏性で何かしていないとむしゃくしゃするのです。

上海GMを辞めてしばらくしてから上海に行って彼女たちに会いましたが、その時にそんな話になり
「どうして僕の言う事だけは素直に聞いたんだ？」と聞いたら「トムの言う事はいつも正しいと
思ったから」と言われて気を良くした事もありました。

これらの秘書たちとは中国版のLINEであるWeChatでやりとりをしていますが、頭の良すぎる女性は
中国人男性も苦手なようでまだ4人とも独身です。

そう言えば僕のいすゞの時の秘書も非常に頭が良く性格の良い美人でしたが未だに独身ですね。

今回はこの辺で区切ってこの続きは僕の履歴書（2）に書きたいと思います。