顧問の松林です。
ドイツでのリエゾンエンジニア
若い頃ドイツのオペル社にリエゾンエンジニア―として駐在していたことがあります。
その時のリエゾンエンジニアは アメリカからシボレー、イギリスからボグゾール,
オーストラリアからは ホールデン、南アフリカからはGMSA,と言う GM系列の自動車
会社から ワールドワイドJカーと言う車を開発するために
集まりました。
派遣されたリエゾンエンジニアーは総じて非常に優秀で その後それぞれの組織の中で
結構 偉くなりました。
ワールドワイドJカーと言うのは車の基本構造は世界中で共通にして夫々の国で小変更を
行う事により その国にベストマッチな車を開発するとともに プロジェクト全体では
投資や開発費を下げながらバリエーションを増やそうという壮大なものでした。
ただこれは考え方としては素晴らしかったのですが 実際は非常に大変で効率も
悪かったのです。
一つの例を挙げると 例えば車の運転席のガラス(Windoshield)をはめ込むためのボディの
落とし込み(Rabbet Depth)一つを決めるにも まずガラスの取り付けの方法が昔からの
ゴムで取り付ける方法と接着剤で取り付ける方法があり落とし込みの寸法が違うのです。
またガラスの周りのボディの開口部の形状も夫々の会社で持っているプレス技術が違うので
コーナーのアールをいくらにするかも夫々の要求が違います。
従ってガラスを取り付けるボディの開口部の形状を決めるだけでも各国からエンジニアが
集まり会議を重ねなくてはならないと言う始末でした。
この事はプロジェクトにとって象徴的な事だったので 僕が帰任する時の寄せ書きの中の
1ページにその漫画が書いてありました。
アメリカやドイツやオーストラリアや日本が勝手な事を言うので僕が「そんなこと
不可能だよ!」と困った顔で言っています。
この車はその後 オペル・アスコナ、ホールデン・カミーラ、キャデラック・シマロン、シボレー・キャバリエ、シボレー・モンザ、いすゞアスカとして各国から発売されました。
ドイツ語の勉強
そのころ上記の各国から来たリエゾンエンジニアが共同でドイツ語を勉強しようと
言う事になりました。
そこでドイツ人のシュムックと言う女性を皆で共同で雇って会社が終わった後で
事務所で勉強しました。
シュムックと言うのはドイツ語で宝石と言う意味で本当にかわいい女の子で皆で
フロイラインシュムックと呼んでいました。(宝石ちゃんと言う位の感じです)
その宝石ちゃんは僕をずいぶんえこひいきしてくれました。
僕が帰任する時には 「寂しくなる」と言って泣かれました。
英語で授業はすすめたのですが 宝石ちゃんは「皆の英語は訛りがひどい。
綺麗なクイーンズイングリッシュを話すのはトムだけだ」と言っていました。
僕はその頃からトムと呼ばれていました。
ドイツ人は人を呼ぶときにファーストネームではなくファミリーネームで呼ぶのですが
僕の MATSUBAYASHIと言う名前は彼らにとっては非常に長くて覚えにくいようなのです。
それで僕の事をマツバヨッシュとかマツバヤスキーとかミシャエッツとか色々
呼びます。そこで僕の名前はツトムなので トムと呼んでくれと言ったのです。
宝石ちゃんのえこひいきに応えて僕のドイツ語の成績は非常に良かったのです。
時々筆記試験がありましたが宝石ちゃんの出す問題に僕は大体90点以上採りました。
所が彼らの平均は大体 50点前後なのです。
彼らは こんな負け惜しみを言っていました。
「ドイツ語の文法は英語に似てるよね。トムは英語の文法を良く知っているが
僕たちは英語の文法は知らないから。」
例えば宝石ちゃんが一生懸命 過去完了(past participle)の説明をしても理解できずに
その内 「あ! Double Pastか!」とか言っていました((+_+))
所が僕の方がドイツ語を上手に話せるかと言うとそうでもないのです。
宝石ちゃんは僕以外の人に 「君たちのドイツ語のRの発音は変!」とか言って
いましたが すくなくともRだと言う事は理解していたのです。
所が僕が何か言うと「ん? 今何て言ったの?」とか言われてしまう事がありました。
又宝石ちゃんが 何かドイツ語で話した時に 僕はその中で知らない単語が3つ以上
あると全体が何を言ったのか分からなくなる事がありました。
所が彼らは「今の話で ○○○と×××と△△△は何て言う意味?」とレピートするのです。
それで宝石ちゃんがそれぞれの単語の意味を説明すると「分かった!」と言うのです。
それから昼間 ドイツ人の秘書をドイツ語でからかったりしているのです。
僕には到底出来ないことでした。
基本的に英語とドイツ語は同系統の言葉なので 英語のネイティブスピーカーは非常に
耳が良いんですね。
英語国民にとてドイツ語は覚えやすい言語の一番と言う記事も見ました。
日本人の英語の勉強は?
日本人にとって英語は決して親和性の強い言語ではありません。
ただ英語と言うのは非常によく出来た言語で 覚えやすい言語です。
名詞に性別が無いし、それによる動詞の複雑な変化もありません。
例えばドイツ語は全ての名詞が男性、女性、中性に分かれており その性別と時世によって
冠詞と動詞が非常に複雑な変化をします。
又英語は発音もそれほど難しくないと思います。
完璧なネイティブの英語発音をするのは日本人にとって非常に難しいですが
例えば僕の場合は典型的な日本人の発音ですがそれでも相手は理解してくれます。
発音が非常に難しいのは中国語で文法はそれほど難しくないのですが 発音が非常に
難しくて例えば何時も泊まるホテルの名前は集中的に勉強したのですが いくら勉強しても
タクシーの運転手には通じませんでした((+_+))
その意味ではドイツ語は発音がそれほど難しいわけでもないので僕もその当時はドイツ語は英語と同じいくらい話せたのですが ドイツ語はその後使う
機会があまり無かったため殆ど忘れてしまいました。
Ich habe alles vergessen!
やはり語学と言うのは積極的に使わないと急速に忘れてしまうものですね。
英語が上手くなるには?
ここで言う上手いというのは大学入試で良い点数を取るとかと言う事ではなく
英語国民と意思を通じ合うという意味ですが。
何かで日本のどこかの空港で白人がお腹が痛くなって床にしゃがみ込んでいたのに誰も
声をかけてくれなかったと言う話を読んだ記憶があります。 Are you OK? と聞くくらいは
日本の義務教育を受けた人なら誰でも言えるはずですがそれが無かったそうなのです。
多分彼を見てそのまま通り過ぎた人たちが不親切な人ばかりと言う分けではなく 完璧な
英語を話そうとして身構えてしまったのだと思います。
そこさえ乗り越えてしまえばその外国人はお腹を押さえて苦しそうな顔をしている筈なので
何とか意思を通じることが出来 彼を医務室に連れて行くくらいは誰でも出来ると思います。
それから最近テレビで見たのですが日本に来た外国人に日本人のダメな所を聞くという
番組がありました。
その中で来日直前に足の骨を折ったというオーストラリア人が大きな松葉づえをついて
インタビューに答えていました。
彼は「日本人には本当にがっかりした。僕がこんな格好で電車に乗っても誰も席を譲って
くれないんだ。」と言っていました。
これも多分彼が思っているように日本人が不親切なのではなく 「どうぞ座ってください。」
と言うのを身構えてしまったのだと思います。
日本に来た外国人はあなたが完璧な英語を話すことを期待していません。何とか意思が
通じれば良いのです。
相手はあなたが英語のネイティブスピーカーだとは思わないでしょうからあなたの話す英語が
間違っていても全く気にしないでしょう。
例えば僕たちも青い目の人が片言の日本語を喋っても別に失礼な奴だとは思わないですよね?
僕の知っている中国人の女性は非常に流ちょうに日本語を離すのですが 日本語の丁寧語、尊敬語
謙譲語が若干不得意なのです。
彼女が西洋人であれば全く問題にならないのですが 外見は日本人と同じで非常に流ちょうな
日本語を離すのです。
相手は完全に日本人と話していると錯覚してしまいます。そこで彼女の日本語の敬語の使い方を少し
間違えてしまうと 相手に不愉快な顔をされると言っていました。
我々が英語を話す時にそのような事を心配する必要はありません。
これから外国人の観光客がどんどん増えて来ると思います。
この記事は英語を話せるようになるには?と言うものでしたが、ほとんどの日本人は
簡単な意思を通じるための英語力は間違いなく十分に持っています。
後は変な心理ブロックを外して積極的に話すだけでOKです。
少なくとも英語に関しては義務教育を受けた人なら簡単な意思疎通だけなら十分な知識は
保有している筈です。後は如何に積極的に使っていくだけだと思います。
困っている観光客を見たら積極的に声をかけてあげましょう。
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